2021-06-07

ちょっとした投資はすぐに回収できる

フリーランスの翻訳者として活動していると、何かとお金がかかることが多いです。その中には自分でなんとかすることでお金をかけなくてもできることもあるので、出費を検討する際に、ちょっとした迷いが出てくることがあるかもしれません。

そんな皆さんに一つアドバイスをするならば、「適切で大きい金額ではない投資であればすぐに回収できると思ってケチらないこと」をおすすめします。基本的にはこの考えでいいと私は思います。目先の出費についてあれこれ考えるのではなく、それによって得られるリターン、いわゆる費用対効果を重視したほうが、長期的に見てプラスになることが多く、精神的にもかなり楽です。

もちろんそれらの投資は正しい知識を持って判断しないとただの浪費になってしまうので、目についたものに片っ端から投資していくスタイルというのはダメです。

そこで今回は、翻訳者として活動していく上でどんなことに投資をしていく必要があるのか、いくらぐらいの投資が必要なのか、それらの費用対効果はどの程度なのか、解説していきたいと思います。

目次

単発のセミナーや勉強会

一回あたりの投資額 2000円~5000円程度

高額な長期講座や翻訳学校については目的や計画に応じてよく検討したほうが良いですが、単発でのセミナーや勉強会は一回あたりの金額も手頃で、最近はコロナの影響もあってほとんどのものがオンラインで参加できるようになっているため、積極的に参加したいところです。

単発系の良いところは、テーマがあらかじめ決められていて、自分の目的にあったものを選んで参加できることです。大体が2時間程度で開催されますが、その時間の中にテーマの内容が詰まっていて時間効率も悪くありません。特に独学で翻訳を学んでいる人や、知識不足を感じている現役の人には、足りないところをピンポイントで補う方法として最適です。

また、年にいくつか業界内の大きなイベントが開催されます。有名なところだとJTF翻訳祭、日本通訳翻訳フォーラム、英日・日英翻訳国際会議(IJET、2020年、2021年は中止)などがありますが、数十のセッションが数日~数週間に渡って行われます。参加者も非常に多く注目度の高いイベントなので、参加費用は単発よりも少し高いですが、それでも十分お釣りが来るほど内容は充実しています。

イベントに参加することで、知識を得るだけでなく同業者やクライアントとの交流にも期待ができるのも良いところです。

これだけいい事だらけのイベント参加は、コストパフォーマンスとしては最高ですし、数千円を惜しんでこういった機会を見逃すのは非常にもったいないので、これはと思ったものには是非参加しましょう。

案件獲得のための投資

費用の目安 0円~20000円程度

ここで言う案件獲得のための投資とは、求人情報を得るためのサービスの利用にかかる費用です。仕事を探すに当たっては必ずしもお金が必要というわけでもなく、1円もかけなくても案件を得ることは可能です。

営業活動に手応えがない人や、時間を節約してスムーズに求人情報を集めたい人、幅広い条件の案件情報を探したい人などは、有料サービスの利用を検討するのも一つの手です。

具体的には翻訳関連の有料コミュニティーや求人サイトの会費(国内ではAmelia、海外だとProz(無料でも利用できるが制限がある)あたりが有名)、SNS(≒Linkedin)の有料プランなどです。私もフリーランスを始めた頃は複数の有料サービスを利用していましたが、仕事が安定したタイミングで一旦すべて更新せず利用をやめました。また必要に応じて利用を再開すれば良いのでそういった使い方がおすすめです。

このようなサービスは大抵年会費で払うことになりますが、5000~10000円ぐらい、高くても15000円ぐらいのものです。なにか一つでもまとまった案件が取れればそれだけで十分ペイできる金額なので、信用できるサービスならどんどん利用していっていいと思います。特に翻訳者になりたての人には、選択肢も多くなりますし「探す」という行為にかかる時間も節約できるのでおすすめしたいです。

名刺、ドメイン、サーバー費用

費用の目安 併せて5000円~10000円程度

営業にかかるコストも切り詰めようと思えばタダ同然で可能ではありますが、莫大なお金がかかるわけでもないのでケチらない方が懸命です。

名刺(今はあまり使う機会がありませんが…)、メールアドレス用の独自ドメイン代などだけなら年に数千円しかかかりません。フリーランスにとって大事な信用を高めるための支出が数千円なら安いものです。営業活動のために自前のブログやHPを設置する場合にサーバー代などを足しても1万円は超えないでしょう。

設備投資

費用の目安 予算に応じて

在宅で仕事をする翻訳者の仕事では、デスク周りの環境は生産性に大きく関わってきます。
生産性は翻訳にとって時給に直結するところなので、出費を惜しんで生産性を落とすのは本末転倒だと言えます。

お金をかけようと思えばいくらでもかけられるのが作業環境への投資ですが、サブディスプレイは必ず買ったほうが良いです。1画面でも作業は可能ですが、2画面、3画面使ったときとの作業効率の違いは歴然です。安いものなら1万円代ぐらいから買えますが、画面を増やすだけで1年で数十万円の価値がありますので早めに導入することをおすすめします。

辞書

費用の目安 0円~50,000円程度

「良い翻訳者ほど辞書をよく引く」と言われるほど、翻訳者にとって辞書は大事なものです。

辞書についてはTwitterでアンケートを取ってみました。

やはり多くの人がそれなりに投資をしている結果となりました。その一方ですべて無料の辞書でまかなっているという人もいます。

これについてはたびたび議論になりますが、有料を使っているかいないか、というよりも、有料、無料問わず自分の仕事でいかに適切に使いこなせているか、ということが重要です。適切な辞書の引き方、調べ方がわかっていれば、自分にとって有料の辞書が必要かそうでないかも自然とわかってくるはずです。色々な辞書を手元に揃えていればそれでいいというわけではなく、使いこなせなければ宝の持ち腐れです。

分野や内容によって辞書にいくら投資するべきかというのはまちまちですが、必要に応じて数万円程度の投資はあるということは認識しておいたほうが良いでしょう。出し惜しみをして品質を下げてしまうと、仕事そのものを失うこともありえるので、必要と感じたら躊躇なく投資をするべきだと思います。

QA、構成ツール

費用の目安 年間0~10,000円/1ツール程度

翻訳の作業では、人力でチェックするものをツールで自動化できるものがいくつもあります。表記ルールのチェック、誤字脱字、英数字、表記ゆれなど、人間の目で見るだけではどうしても拾いきれないものも、ツールを使いこなせば正確に潰すことが可能です。

私は有料のツールだとXbench色deチェックを使っていますがこれらを使うことによる最大のメリットは、確認作業の時間短縮です。年間単位で見ると、使わずに自分の目で確認するのと比べてかなりの時間を短縮できているはずです。

大抵のツールは1年あたり1万円程度の投資となりますが、それを使って浮いた時間を考えれば十分すぎるほど元がとれています。無料のツールでも便利なものがたくさんありますので、周辺ツールへの投資は積極的に検討したほうが良いと思います。

コミュニティ、団体への参加

費用の目安 年間10,000円程度/1団体

有料のコミュニティー、団体に所属することのメリットは主に、「求人を探せる」「イベントや勉強会に参加できる」「人脈ができる」「業界の情報などが入って来やすい」などです。

目的は人によって違いますが、興味のあるものがあればまずは一度何かに入ってみることをおすすめします。お金だけ払って何もしない、何にも参加しないという状況だと単にお金の無駄ですが、目的にあったコミュニティであれば元を取るのは難しくないでしょう。

所属していなくても、イベントなどは割高になりますが参加できることがありますし、無理に所属する必要はありませんが、各団体の活動内容をよく調べて検討してみてください。

反対に「ちょっとしない」投資って?

ここで少し話題を買えて、ちょっとした投資ではなく、金額が大きくリスクもあるものについて少し触れておきます。

翻訳学校、翻訳講座

学校と言ってもピンキリですが、高いものだと数十万の投資になります。この投資を数ヶ月から数年かけて回収していくわけですから、せっかくお金を払って得るものがなかった場合、痛い損失となります。学校の質、目的にあった内容をしっかりと調べることももちろん大事ですし、投資に見合った成果を得るに当たって自信のモチベーションも重要です。ある程度覚悟を持って取り組まないと途中で挫折してしまってお金も時間も無駄にしてしまいます。

PC、CATツール

実際に作業に使うPC、翻訳支援ツール(CATツール)のライセンスもどの程度投資するべきかは迷うところです。

PCはあまりにも低スペックなものだと生産性に支障が出るためある程度のものを買うべきですが、上を見ればキリがありません。個人的にはハイエンドとまではいいませんが、ビジネス仕様である程度高いスペックのものを使うのが良いと思います。
ごく稀にサポートされていない古いOSを積んだPCのスペックを履歴書に堂々と書いている人などがいますが、そういうのは問題外ですね。。

CATツールのライセンスはケースバイケースになります。取引する会社、専門分野などによって必要なツールも変わってきますし、高いものは7~8万円近くするものもあるので、焦って買う必要はありません。また、最近はクライアントがライセンスを貸与してくれるタイプの案件も増えてきています。自分の現在の状況に応じて判断すればOKですが、必要となったらいつでも買うぐらいの気持ちでいたほうが良いのではないかと思います。そのツールを買うことで将来的に何百万もの売り上げが期待できるのであれば、7~8万でも1ヶ月で元が取れます。

まとめ

今回紹介した投資は、ほとんどが「絶対投資しなければならないもの」ではありません。
しなければしないでどうにかすることも可能なので、だからこそ人によって、状況によって迷いが生まれることがあります。

迷ったときは、その投資によって自分に何が帰ってくるのか、何が買えるのかをよく考えてみてください。
基本的に「時間」と「品質」を買えるもので高額なものでなければ、効果は売上となってすぐ跳ね返ってくるので、「特に理由はないけどお金がもったいない」と理由だけで投資を見送ることはあまりおすすめしません。

出費を可能な限り抑えて、自力で何とかしようと頑張っている人は、例えるなら「真夏にクーラーなしで扇風機のみで乗り切ろうとして体調を壊す人」でしょうか…ただし、手当たり次第に投資を繰り返していると、月の固定費が知らないうちに膨れ上がるのでご注意を!

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