2021-05-26

結局、コロナで翻訳業界はどうなった?

新型コロナウィルス、COVID-19の流行が始まって1年と少しが経ちました。
最初の非常事態宣言が出た頃ちょうど私は翻訳会社を退職する時で、経済への大きな影響が予想される中、かなりの不安を抱えながらフリーランスの翻訳者として活動を始めました。
なんだかんだそれから一年が経ち、今もこうして翻訳者として仕事ができているわけですが、これまでの1年と少しの間、翻訳業界に何が起こっていたのか振り返ってみたいと思います。

目次

2020年1月~3月ごろ

去年の1月、2月頃は、「なんだかヤバいんじゃないか」という空気が漂い始めた頃だったと記憶しています。
私は当時まだ翻訳会社に在籍していたのですが、早々に在宅勤務に移行し、4月に退職するまで結局一度も出社しませんでした。

幸い翻訳会社の仕事は、営業はともかく制作については出社しなくても業務に大きな影響はなく、スムーズに移行できました。コミュニケーションが取りにくくなった部分は多少ありましたが、他の業種に比べるとだいぶ楽だったと思います。私の勤めていた会社では以前からコロナ関係なく一部の社員が在宅勤務をする形だったというのもあります。

そんなわけで、翻訳会社視点で言うと働き方に対する影響はあまり大きくなく、ダメージが少なかったと思います。フリーランスに至っては言わずもがな、もともと大半の翻訳者が在宅での仕事ですから、働き方が大きく変わってしまって困ったという人はほぼいなかったと思います。これは業界にとっては不幸中の幸いでした。

一方案件の量はどうだったかというと、この時点ではまだ先行きが不透明だったこともあってか、特に大きな変化はなかったように記憶しています。

2020年4月~10月頃

日本では緊急事態宣言が発出され、本格的にコロナ禍での生活が始まりました。私は退職し、フリーランスとして営業を始めたのですが、早速コロナの影響で退職後すぐに受注するはずだった案件がいくつか立ち消えになり、ゼロからのスタートとなってしまいました。

4月頃、Twitterでアンケートをとってみました。

この時仕事が「減った」と回答した人は3割弱、大きな影響があったというところまではいきませんが、どうも一部の分野が影響を受けているらしいということがわかりました。一方で増えたと回答した人も少しながらいましたが、当時コロナに関連するコンテンツ、ニュースや医療関連文書の案件が増えたと言っていた人がいたのでそういったことと無関係ではなかったと思われます。

その後、私は不安を抱えながらもフリーランスとして営業活動を進めていましたが、目に見えて求人が減ったという印象はありませんでした。会社にはもう在籍していなかったので翻訳会社内部の空気感まではわかりませんが、少なくとも外回りや会社訪問は一切できなくなり、特に国内営業には一瞬インパクトがあったものの、例えばリーマンショックのときのような急激な変化はなかったので、様子を見ていた感じだったのではないかと思います。また、海外、特にヨーロッパの翻訳会社はロックダウンの影響なのか一時期少しだけ混乱が見られましたが、程なく通常のビジネスに戻っていきました。

8月に入って、Twitterでもう一度同じ質問をしてみました。

このときは少し回答数が少なかったのですが、減ったという人は相変わらず3割弱、分からないが減って「変わらない」が大きく増えました。夏頃には一旦「とりあえずは大丈夫っぽい」という雰囲気が界隈にはあったように思います。

案件の量という面ではひとまず深刻なダメージはないという感じにはなりましたが、大きな影響を受けたのは、イベントや学校、セミナーなどです。この年予定されていたイベントは次々と中止になり、通学制の翻訳学校も一旦閉まったところがありました。ただ、翻訳業界では動きは速く、主要なイベントはほとんどオンラインで代替開催され、スクールもオンラインへの移行がどんどん進んでいきました。

イベントやセミナーのリモート開催は思った以上に盛況で、昨年開催された翻訳関連のイベントはかなりたくさんの人が参加し、概ね好意的に受け入れられました。特に地方在住で今までなかなか参加ができなかった人などは恩恵が大きかったと思います。今後世の中が戻った後どのような形になっていくのかはまだわかりませんが、このタイミングで学びや交流の場が一気にオンライン化し一定の成功を収めたことで、オンラインイベントは何らかの形で残っていくと思います。

2020年11月~現在

昨年の年末ごろからは、少なくとも表面上は翻訳業界でコロナによる悪影響が大きく議論されることは減ってきました。もちろん国全体としては大きな影響を受けているので、個々の生活には良くも悪くも変化があった人は少なくなかったと思います。業界的には、幸いにも旅行業界や飲食業界のような壊滅的な打撃を受けることなく持ちこたえた(むしろ伸びている会社もあると思います)ので、ある程度前向きな、これからの世の中での翻訳業界の進むべき道が話し合われるような状況になっていったと思います。

「コロナの影響で仕事がまったくなくなった」という声は、少なくとも自分の周りでは聞いたことがありませんし、1年と少し経った今、ひとまず世の翻訳者は仕事の上では平穏を取り戻しつつある、というのが現在の状況だと感じています。

これからどう変わっていくか予想

この世界的な災難の中で、どちらかというと翻訳という仕事は底堅さをある程度示すことができたのでないかと思います。翻訳者にとっては一旦ほっと一息といったところですが、これからの世の中、何がどうなっていくかはまったくわかりません。そこで自分なりに今後業界にどのような変化が起こっていくのかを予想してみたいと思います。

オンライン化の加速

先程述べたように、イベントやセミナー、スクールなどは、オンラインへの移行でプラスになった面も多々あったと思います。これはいずれそうなるべきものが早まったと見るべきで、完全にすべてが移行することはないと思いますが、流れは続くと思います。また、翻訳会社もテレワーク化が進んだところが多かったと思いますし、もともとワークフローのほとんどがオンラインの業種なので、これからさまざまな所に手が入っていくのではと思います。

需要の変化

翻訳業界は、エンドクライアントの需要によって支えられています。新型コロナに大きく影響を受けたこの世界で、人々のライフスタイルも変わり、翻訳の需要も変わっていくかもしれません。伸びる分野もあれば、衰退が加速する分野もあるでしょう。また、クライアントが翻訳を買う理由、翻訳に求められるもの自体も変化していくかもしれません。これが良い面に出るか、悪い面に出るかはわかりませんので、注意深く見守る必要があると思います。

翻訳者の増加

これはすでに影響が出始めている部分かもしれません。今回のコロナ禍で、現在の仕事に不安を覚えた人、仕事を失った人、新しい多様な働き方を考え始めた人、色々いると思います。そんな中、在宅ワークの代表格でもある翻訳者という仕事に興味を持つ人は少なくないようです。翻訳の需要は増え続けているため、歓迎すべきことですが、業界として初心者をうまく受け入れる体制が業界全体で整っているかと言うとそういうわけでもないのが現状です。

楽観はせず、注意深く見守ることが重要

このように、ひとまず持ちこたえたかのように見えるこの業界ですが、安心してみていられるかというとそうでもないということがわかってきました。ただ、悪いニュースだけでなく、ここ数年暗い話題が多かった翻訳業界にとって、かすかな希望の光が見え始めたのも事実です。決して油断することなく、これからの新しい世の中に翻訳者も適応していくことが大事なのではないでしょうか。

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